喉頭全摘出の障害年金請求について
通常、初診日(初めて医師の診察を受けた日)から1年6か月後が障害認定日ですが、喉頭全摘出の場合、喉頭全摘出日が障害認定日となります。
(初診日からすでに1年6か月を経過しているときは1年6か月後)
したがって、例えば、初診日から3か月目に喉頭全摘出となった場合はその日が障害認定日となります。
ここで間違えやすいのが、「喉頭亜摘出」の場合は、障害認定日の特例が適用されず、摘出日ではなく1年6か月後が障害認定日となります。
喉頭『亜』摘出とは、両側の声帯を含む甲状軟骨(のど仏の軟骨)を取り除く手術です。声門がんに主に行われますが、声門上がんでも一部行われます。術後は声帯がなくなり、ガラガラ声にはなりますが、発声は可能です。
(喉頭全摘術は喉頭を全てとるため、声が出せなくなります)
また、『咽頭』摘出した場合も、障害認定日の特例はありません。
(咽頭と喉頭の主な違いは、咽頭が鼻腔と口から喉頭、食道へと続く消化管の一部であるのに対し、喉頭は気管の上部にあることです)
<最後に>
●喉頭全摘出の場合は、摘出日が障害認定日。 ⇒ 喉頭亜摘出と咽頭摘出を除く
●障害年金等級の目安は2級で永久認定。
●障害者手帳の目安は3級。
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働きながら障害年金を受給できるかどうか
仕事をしていても障害年金を受給に影響がないのは外部障害の場合です。
●視力障害・視野障害
●聴力障害
●肢体障害
また、下記の場合も等級が決まっているので就労が受給の妨げになることはありません。
●人工透析
●人工関節
●心臓移植や人工心臓
●人工弁、心臓ペースメーカー、人工肛門
精神障害・知的障害は就労先が
・特例子会社
・障害者枠での一般企業
・就労支援A型
・就労支援B型
・就労移行支援
・生活介護(障害者支援施設通所)
であるケースや、会社から特別な配慮(短時間勤務、介助者を配置している、作業が単純かつ反復作業)をうけている場合に、受給の可能性が出てきます。
内部障害(内科系疾患)の場合は、一般状態区分(と疾患によっては検査成績)が基準になってきます。
悪性新生物の一般状態区分を例として挙げます。
ア 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
イ 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの
ウ 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
エ 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中 の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
オ 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、 活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの
就労との関係を考える場合、イの軽労働や座業ができる場合は3級(厚生年金のみ、基礎年金不該当)ということになります。
これでは疾病に苦しみながらかろうじて軽労働で生計を維持している場合、年金制度の目的である稼得能力の喪失に対する所得保障の趣旨に沿っていません。
上記の悪性新生物の疾患では、
・脳腫瘍により肢体や視力、聴力を失った場合
⇒ 悪性新生物用の診断のほかに、肢体、視力、聴力(外部)の診断書添付
・舌癌により舌を全摘した場合は
⇒ 悪性新生物用の診断のほかに、そしゃく・嚥下・言語の診断書を添付
上記のように外部障害の診断書を添付することで、就労していても受給できる可能性が上がってきます
脳血管障害の障害認定日について
障害認定日とは、障害の状態を定める日のことで、その障害の原因となった病気やけがについての初診日から1年6カ月を過ぎた日になります。
ただし、下記のように、1年6か月を経過する前に障害認定日として取り扱います。
(一部抜粋)
●脳血管障害…初診日より6か月経過した日以後に、医学的観点からそれ以上の機能回復がほとんど望めないと認められるとき
●人工透析…透析開始日から3月を経過した日、 かつその日が初診日から1年6月以内の場合
●切断または離断による肢体障害…原則として切断日、離断日(障害手当金は創面治癒日)
脳血管障害の障害認定日は、6か月を経過すればすべて障害認定日となるわけではなく、機能障害を残していて、かつ、症状固定(医学的観点から、それ以上の機能回復がほとんど望めないとき)が認定された場合となります。
また、注意が必要なのは、高次脳機能障害を併発している場合、高次脳機能障害は精神障害の「器質性精神障害」となり、1年6か月前に症状固定と認定されることは極めて難しいと考えられます。
脳血管障害による肢体障害と高次脳機能障害を併合して認定を受ける場合は、
① 先に肢体の障害で6か月経過後の症状固定の認定を受け(固定しているとき)
② 初診日から1年6か月後に精神障害の申請をするか
③ 又は、肢体の障害の認定日1年経過後に額改定請求する
ことになります。
障害に直結する疾病の前に原因となった疾病がある場合(相当因果関係)
障害年金における相当因果関係とは、「前の疾病又は負傷がなかったならば後の疾病が起こらなかったであろう」という場合のことを意味します。
前の疾病又は負傷がなかったならば、後の疾病が起こらなかったであろうと認められる場合は、相当因果関係ありと見て前後の傷病を同一傷病として取り扱われます。
通常、障害の原因となる病気やケガではじめて医師・歯科医師の診療を受けた日のことを、障害年金での初診日といいます。
ただし、障害の原因となった傷病(病気やケガ)の前に「相当因果関係」がある傷病があるときは、最初の傷病の初診日が障害年金での初診日となります。
●相当因果関係ありと取扱うことが多いもの
①糖尿病と糖尿病性網膜症または糖尿病性腎症、糖尿病性壊疽(糖尿病性神経障害、糖尿病性動脈閉鎖症)
②糸球体腎炎(ネフローゼを含む)、多発性のう胞腎、慢性腎炎に罹患し、その後に慢性腎不全になったもの
③肝炎と肝硬変
④結核とその化学療法による副作用としての聴力障害
⑤手術等による輸血による肝炎
⑥ステロイドの投薬とその副作用で生じたことが明らかな大腿骨頭無腐性壊死
⑦事故又は脳血管疾患による精神障害
⑧肺疾患に罹患し手術を行い、その後生じた呼吸不全
⑨転移性悪性新生物は、原発とされるものと組織上一致するか否か、転移であることを確認できた場合
例えば、③の肝炎と肝硬変の場合、同一傷病とみなされて、
・肝炎の初診日
・肝炎の初診日時点の保険料納付要件を満たしているか
・肝炎の初診日時点で加入している年金制度(国民年金・厚生年金等)
で裁定結果が決まることが多いです。
また上記のほかにも、精神疾患の場合、病名が相違していても、同一傷病として認定される場合があります。
複数の傷病があるときの障害年金(国民年金か厚生年金か)
注意:初診日が国民年金加入時のものを「障害基礎年金」
初診日が厚生年金加入時のものを「障害厚生年金」としています。
①先に厚生年金3級の年金をもらっている人が、さらに、会社員の時に初診日のある3級程度の障害を負った場合
障害厚生年金3級 + 障害厚生年金3級 = 障害厚生年金2級
※2級になるのは、併合判定参考表の3級5号か3級6号の時に限ります
それでは、後の障害が、会社員の時の初診日ではないとき(自営業等、国民年金加入時)だったらどうなるでしょう?
国民年金には、3級はない(1・2級のみ)ので、後の障害は「障害基礎年金不該当」の障害の程度となります。
障害厚生年金3級 + 障害基礎年金不該当 = ? (等級は、2級に該当)
いままで2級以上に該当したことがなく、今回初めて2級に該当する場合、後に障害になった日の初診日の年金制度によって決定されます。
したがって、「?」のなかには、「障害基礎年金2級」が入ります。
(正確には、障害厚生年金3級と、障害基礎年金2級のどちらかの選択になります。)
前の障害と、後ろの障害の年金制度が逆だったらどうでしょうか?
障害基礎年金不該当 + 障害厚生年金3級 = 障害厚生年金2級
⇒ 初めて2級に該当する場合は、後の障害の初診日の年金制度になる
②障害基礎年金2級を受給している人が、さらにそのあと、会社員の時に2級相当の障害を負った場合
障害基礎年金2級 + 障害厚生年金2級 = 障害厚生年金1級
⇒ 前の障害と後の障害のどちらかが、「障害厚生年金2級(相当)」の場合、障害厚生年金の受給になります。(上記の障害の前と後が逆でも、障害厚生年金)
障害厚生年金2級 + 障害基礎年金不該当 = 障害厚生年金1級
※後の障害が3級5号相当だったときに限る
③障害基礎年金2級を受給している人が、さらにそのあと、会社員の時に3級相当の障害を負った場合
障害基礎年金2級 + 障害厚生年金3級 = 障害基礎年金1級
※後の障害が3級5号相当だったときに限る
⇒ 前の障害と後の障害とも、2級相当以上に該当するものが、障害基礎年金だけだった時は、障害基礎年金の受給になります。(上記の障害の前と後が逆でも、障害基礎年金)
障害年金の併合認定について
2つ以上の障害がある場合、別表1の併合判定参考表でそれぞれの障害の番号を求め、この番号を別表2の併合認定表にあてはめます。このあてはめた番号を併合番号といいます。
併合番号によって等級が決まります。
★2つ以上の障害の併合認定の例
① 両目の視力が0.6以下
② 両耳の平均純音聴力レベル値が70デシベル以上のもの
③ そしゃく又は言語の機能に相当程度の障害を残すもの
③ 一下肢を足関節以上で欠くもの
以上4つの障害があった場合で考えます。
まず、上記4つの障害を、併合判定参考表にあてはめます。
併合判定参考表


併合判定参考表により
① 両目の視力が0.6以下 → 9号
② 両耳の平均純音聴力レベル値が70デシベル以上のもの → 7号
③ そしゃく又は言語の機能に相当程度の障害を残すもの → 6号
④ 一下肢を足関節以上で欠くもの → 4号
求められた番号の9号と7号、6号、4号を軽いほうから順に併合認定表にあてはめていきます。
9号と7号を併合して7号。
7号と6号を併合して4号。
4号と4号を併合して1号。

1号は1級です。

※同一部位に障害が併存している場合には例外がありますのでご注意ください
呼吸不全の障害年金
呼吸器疾患(呼吸不全)の障害年金
呼吸器疾患は以下の3つに分けられます。
① 肺結核
② じん肺
③ 呼吸不全
今日は、上記のうちの③呼吸不全について記載します。
認定の対象となるのは、主に慢性呼吸不全の状態にある方です。
慢性呼吸不全をおこす病気は
・肺気腫
・気管支喘息
・慢性気管支炎等
・間質性肺炎
・肺結核後遺症
・じん肺等
があげられます。
※肺疾患だけが対象ではなく、心血管系異常、神経・筋疾患、中枢神経系異常が原因となるものも含みます
等級認定にあたっては、
★A表 動脈血ガス分析値 (動脈中の酸素と二酸化炭素の圧力の分析)
★B表 予測肺活量1秒率 (最初の1秒で、最大に吐き出せる呼吸量の何%か)
★一般状態区分表
を組み合わせたうえで、認定時の具体的な日常生活状況等を把握し、総合的に認定します。

単位のTorrは「トル」と読む。ものの圧力を示す単位でmmHgと同義。現在では生理学の分野でもTorrが使われるが、血圧については慣習的にmmHgが使われている。


呼吸不全 等級目安

慢性気管支喘息 等級目安

障害年金の遡及請求
障害認定日から1年が過ぎてしまった場合、遡及請求という(障害認定日時点に対して請求をさかのぼる)方法があります。
遡及請求の際に提出する診断書は、障害認定日以降3ヶ月以内の診断書1枚、と請求日以前3ヶ月以内の診断書1枚、合計2枚の診断書が必要になります。
(障害認定日から1年以内の請求だと、障害認定日以降3ヶ月以内の1枚のみの提出です)
言い換えれば、過去の障害認定日時点の遡及請求を考えていても、障害認定日以降3ヶ月以内の診断書がないと、事後重症請求になります。
障害認定日請求:初診日から1年6か月の翌月からの受給を目指す
事後重症請求:請求月翌月からの受給を目指す
遡及請求の時効は5年です。
仮に、5年以上前の障害認定日時点にさかのぼって請求を行いたい場合、請求が遅くなるほど時効にかかる部分が増えていくので、請求を急ぐ必要があります。

請求後、支給は決定したけれど、『障害認定日』より請求日の方が症状が重いのに、思った等級より下だった」ということがあります。
この場合、請求時に「額改定請求書」も同時に提出しておくことで「『障害認定日』より請求日の方が等級が上だ(悪化している)」と不服申し立てすることができます。

しかし、不服申し立てはできますが、再び額改定請求するには1年間待たなければならないので、今後症状が悪化する可能性がある場合は、請求時に「額改定請求書」を出さず、その後に額改定請求をした方がよいこともあります。
そのため、請求時に「額改定請求書」を提出するかどうか、病状の経過などを考えてからの判断が必要です。
精神の障害(発達障害・知的障害含む)の等級目安
障害認定基準に基づく障害の程度の認定については、精神の障害に係る等級判定ガイドラインで定める
「障害等級の目安」を参考としつつ、その他の事項を考慮し、総合的に判断されます。
「精神の障害にかかわる等級判定ガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12512000-Nenkinkyoku-Jigyoukanrika/
0000130045.pdf
このなかの「障害等級の目安」とは何でしょうか?
それは、診断書(精神用)の⑩欄(障害の状態)のウ(日常生活状況)の2(日常生活能力の判定)と
3(日常生活能力の程度)を使用します。
⑩欄のウの2と3を「等級マトリクス表」にあてはめます。
これが等級の目安になりますが、これだけではなく
・症状・状態
・療養状況
・就労状況等
を考慮して総合的に判定されます。
添付の資料ですと⑩欄のウの2
(1) 適切な食事 4点
(2) 身辺の清潔保持 4点
(3) 金銭管理と買い物 4点
(4) 通院と服薬 4点
(5) 他人との意思伝達および対人関係 4点
(6) 身辺の安全保持及び危機対応 4点
(7) 社会性 4点
合計 28点 ÷ 7項目 =平均4点

⑩欄のウの3
この方は精神障害の(5)精神障害を認め、身の回りのこともほとんどできないため、常時の援助を
必要である、となっています。

上記の結果をマトリクス表(表1 障害等級の目安)にあてはめると、「判定平均」が3.5以上、
「程度」が(5)になるので、目安1級ということになります。

初診日から長期間経過している場合(20歳前の初診日)
初めて医師の診察を受けた日は数十年前で、医師の証明書が手に入れられない。そもそも廃院になっている。そんなとき、「申請してもダメだろう」とあきらめてませんか?
初診日から長期間経過し、医師の証明が取れない場合は、『明らかに20歳以前に発病し、医療機関で診療を受けていたことを複数の第三者が証明したものを添付できるときは、初診日を明らかにする書類として取り扱う』とされています。
(平成23年12月16日 年管管発1216第3号)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb8797&dataType=1&pageNo=1
・複数の証明とは何人必要か?
→少なくとも2人以上
・第三者証明とは誰に頼めばいいのか?
→民生委員・病院長・施設長・事業主・隣人等など。(民法上の三親等内の親族は除く)
上記の第三者証明のほか、受診状況等証明書(医師の証明書)を添付できない申立書と、障害者手帳等の参考資料を総合的に判断します。
視野障害について
眼の障害について、視力はあっても、視野の状態だけで障害年金が受給できます。
1級
ゴールドマン型視野計の測定で、両眼のⅠ/4視表による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下、かつ、Ⅰ/2視標による両眼中心視野角度が28度以下のもの
又は、自動視野計による測定で、両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野点数が20点以下のもの
2級
ゴールドマン型視野計の測定で、両眼のⅠ/4視表による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下、かつ、Ⅰ/2視標による両眼中心視野角度が56度以下のもの
又は、自動視野計による測定で、両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野点数が40点以下のもの
3級(厚生年金のみ)
ゴールドマン型視野計の測定で、両眼のⅠ/4視表による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下に減じたもの
又は、自動視野計による測定で、両眼開放視認点数が70点以下に減じたもの
*ゴールドマン視野計の「視標」とは、目で追う光源を示しており、分子のローマ数字は光の大きさを表します。
Ⅰは0.25m㎡、ⅠからⅤになるほど大きくなり、Ⅴは64m㎡。Ⅰ→Ⅴ(大きい)
分母の数字は光源の明るさを表します。4が明るく、4→1(暗い)
障害年金の種類について
障害年金には
・障害基礎年金
・障害厚生年金
の2種類があります
これは障害の原因となった傷病で初めて病院を受診した日に加入していた年金制度により、決まります。
自営業者や専業主婦、受診した日が20歳未満だった人(20歳未満で会社に雇用されていた人を除く)は障害基礎年金です。
これに対して、会社に雇用されていて厚生年金保険の被保険者だった人は、障害厚生年金となります。
*パートなどの時給制で働いていても、厚生年金に加入していた場合があるので加入記録を調べます。